
東洋医学では、生命を支える基本的な要素を「気・血・水」として大きく捉えます。
そのうちの「血(けつ)」は、現代でいう血液にあたりますが、その生成や働きについては東洋医学独自の考え方があります。
※血の役割
血は体の隅々まで栄養と潤いを届け、心身の働きを支えるものと考えられています。単に酸素や栄養を運ぶだけでなく、精神を落ち着け、感情を安定させるんですね。
例えば、肌や髪につやを与えるのも血の力、集中力や安眠をもたらすのも血の働きとされます。

※血の作られ方と巡らせ方
血は、日々の食事から得られる栄養をもとに体の中でつくられます。東洋医学では、この血をつくる中心的な役割を五臓六腑の「脾(ひ)」が担うと考えられています。そして、血は「つくられる」だけでなく「巡る」ことも重要です。いくら十分にあっても、流れが滞れば体の隅々に届かず、不調の原因となります。
その「血」を巡らせるためには、日々の「上機嫌」と「運動」が欠かせません。楽しいことや嬉しい事、心が和む時間は血の巡りを安定させます。また、体を動かすことは血液の循環を助け、筋肉や全身に潤いを行き渡らせる大きな助けとなります。
※血の不調
血に関する代表的な不調には「血虚」と「瘀血」があります。
・血虚(けっきょ)=血の不足
皮膚や髪のつやが失われたり、顔色が青白くなったり、めまい、不眠、動悸、不安感などが出やすくなります。女性では月経量の減少や無月経を招くこともあります。
・瘀血(おけつ)=血の滞り
血がスムーズに流れず、停滞してしまう状態です。刺すような痛み、肩こりや腰痛、生理痛の悪化、しこりやあざが消えにくいといった症状が出やすくなります。感情面ではイライラや怒りが強くなることもあります。
例えば、瘀血による症状も、その背景には血虚が原因となっている「血虚による瘀血」という診かたもあります。
同じように見える症状でも、血の不足から来ているのか、流れの停滞が中心なのかによって、原因も治療法もまったく異なります。鍼灸ではその違いを見極め、血を補ったり巡りを整えたりして、体全体の調和を取り戻していくんです。