東洋医学では、生命を支える基本的な要素を「気・血・水」として捉えます。これらは体内を巡ってはたらき、日々の生命活動を支えています。
一方で「精(せい)」は少し性質が異なり、巡るものではなく、気・血を生み出す源であり、さらには成長や発育、生殖などに深く関わる生命の根本資源と考えられています。
※「精」の役割
「精」は成長や発育を支え、生殖能力や老化にも深く関わる生命のエッセンスです。髪や歯の丈夫さ、記憶力の維持も「精」の働きによるもので、過度に消耗すると老化が早まると考えられています。また「精」は脳や骨髄を養い、必要に応じて気や血を生み出す源ともなります。
※精の作られ方と蓄え方
精には大きく二つの種類があります。
・先天の精
両親から受け継いだ、生まれつき備わる精です。生まれた時点で総量は決まっており、その後は消耗していくだけで増えることはありません。
・後天の精
生後、飲食物から養われる精です。飲食物の栄養が気や血のもととなり、五臓六腑を養い、その余剰分が「精」として体に蓄えられます。
先天の精は限りあるものなので、過度に消耗させないためにも、後天の精を充実させておくことが大切です。とはいえ、食べたものを処理しきれなければ、かえって不調の原因になりますので食べ過ぎ偏食には要注意です。
※「精」不調
精(せい)は体に蓄えられた生命活動の資源です。年齢とともに少しずつ減っていくのは自然なことですが、食生活の乱れや過労、大きなケガや病気、出産などで一気に消耗することもあります。
・精虚(精不足)
精が足りない状態を指します。成長や発育が遅れる、記憶力や集中力の低下、めまい、耳鳴り、腰や膝のだるさ、生殖機能の衰え、白髪や抜け毛、歯や骨の弱り、老化の加速などが現れやすくなります。
老後の健康寿命のためにも、「精」の過度な消耗による健康負債を抱えないことが大切です。とはいえ、生きている限り「精」を大きく使わざるを得ない時期もあります。そんな時こそ、いつも以上に飲食や睡眠、休息に気を配り、負債を最小限にとどめたいところです。鍼灸では、気・血・水の巡りを整えながら、総合的に「精」を支えていきます。