眼精疲労とは、目を使う作業を続けた後に、目の痛みやかすみだけでなく、肩こりや頭痛など全身に症状が広がる状態を指します。単なる「目の疲れ」とは異なり、休息や睡眠をとっても十分に回復せず、不快感が慢性的に続くのが特徴です。PCやスマホの使用が日常化している現代では、多くの人が抱える身近な悩みとなっています。
◇主な症状
・かすみ / ぼやけ
ピントが合いにくく、視界がぼやけることがあります。
・乾燥 / しょぼしょぼ感
まばたきの回数が減ったり、涙の分泌が減ることで目が乾きやすくなります。
・まぶしさ
少しの光でもまぶしく感じる「光過敏」が出ることがあります。
・充血
目の血管が広がって赤くなりやすくなります。
・首肩こり
目を使うと無意識に肩や首の筋肉も緊張しやすくなります。
・頭痛
目の疲れから緊張性頭痛を引き起こすことがあります。
・吐き気
強い目の疲れや頭痛に伴って、吐き気を感じることもあります。
◇主な原因
・目の使いすぎ(作業負荷)
パソコンやスマホの長時間使用
読書や細かい作業(裁縫、製図など)
・目の調整機能の問題
老眼(加齢によるピント調節力の低下)
視力に合わないメガネやコンタクト
・環境要因
PCやスマホ画面の光
照明が暗すぎる・明るすぎる
空気の乾燥(ドライアイ)
・体の不調やストレス
肩こり、首こり
自律神経の乱れ
睡眠不足や精神的ストレス
◇「眼精疲労」の鍼灸治療

※東洋医学的な見立て
東洋医学では「肝は目に開竅する」とされ、肝と目は密接に関係しています。肝は血を蔵し、その血によって目を滋養しているため、肝血が不足すると目に十分な栄養が行き渡らず、乾きやかすみ、疲れやすさといった症状が現れます。もともと眼球は血管の塊のような器官であり、血の質と巡りの影響を受けやすい部分でもあります。また、肝には気血の流れを調整する「疏泄(そせつ)」の働きもあり、これが乱れると血流が滞り、目の奥の重だるさや痛み、充血などの不調を引き起こします。眼精疲労の改善には、肝血を養い、肝の疏泄機能を整えることが重要と考えられています。
当院では、以上の視点を踏まえながら、問診と全身の状態を確認し、気・血・津液、五臓六腑、経絡のバランスを総合的に判断します。その上で、鍼や灸を用いて適切なツボ(経穴)に刺激を加えることで、「眼精疲労」の改善を目指していきます。

※眼精疲労によく使うツボ(経穴)

頭部への気血の巡りを調整する重要なツボ(経穴)です。深部には後頭下筋群があり、ここが硬くなると眼精疲労や首肩こり、自律神経の乱れにつながります。後頭下筋群は指圧では届きにくいため、鍼によるアプローチが効果的です。

顔面部には、約40か所のツボ(経穴・奇穴)があります。目の症状に効果的なツボも多く、この写真はその一部を紹介したものです。美容鍼でもよく使用します。目まわりのツボは、血流を促し、筋肉の緊張を和らげることで、目の疲れやくすみ、むくみの改善にもつながります。

東洋医学では「肝は目に開竅する」と伝えられています。「太衝」は肝の経絡に属し、「光明」は胆の経絡に属します。肝と胆は陰と陽の表裏関係にあり、互いにバランスを取り合いながら、気血の巡りや身体機能を支えています。そのため、目の疾患には肝胆の経絡を整えることがとても重要です。