パーキンソン病は、脳の神経細胞がドーパミンを生成しづらくなり、運動障害を中心にゆるやかに進行する神経系の疾患です。好発年齢は60代、有病率は10万人あたり約100人とされ、近年の高齢化に伴い患者数は増加傾向にあります。
◇主な症状
・安静時振戦
じっとしているときに手や足が細かく震えます。
・筋固縮/動作緩慢
筋肉がこわばって動作がゆっくりになります。
・姿勢反射障害
バランスをとる力が弱まり、転びやすくなります。
・自律神経症状
便秘をはじめあらゆる症状があらわれます。
・精神症状
気分の落ち込みや不安感が強くなったり、認知機能が低下することがあります。
・睡眠障害
寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めるほか、レム睡眠行動障害がみられることもあります。
◇主な原因
パーキンソン病では脳の中脳にある黒質という部分の神経細胞が変性することによりドーパミンの生成が低下します。なぜそうなるかはまだ明確には解明されていませんが、パーキンソン病になる人には以下のような共通する傾向が多く指摘されています。
・農薬曝露
農薬散布などによって農薬に長期間さらされるとリスクが高まるとされています。
・メラノーマ
皮膚がんの一種であるメラノーマは、パーキンソン病を発症した人に起こりやすく、またメラノーマを発症した人もパーキンソン病になりやすい傾向があります。
・乳製品摂取
大量の乳製品を摂取する人は、リスクがやや高まる傾向があります。
・脳の外傷
頭部に強い衝撃を受けた経験がある人では、発症リスクが高まることされています。
◇「パーキンソン病」の鍼灸治療

現代医学においては、薬物療法が中心ですが、病気の進行自体を止めることは困難とされています。鍼灸治療は、これらの抗パーキンソン薬の効果を補完し、薬効の持続性を高めたり、振戦や筋固縮、自律神経症状の軽減を図ることで、日常生活の質(QOL)の維持・向上を図ります。
東洋医学ではパーキンソン病の震えや筋肉のこわばり、動作の緩慢は肝の機能失調によるものと考えられます。とくに震えは「肝風」によるもので、その背景には加齢による腎の衰え(腎虚)があります。

・肝風内動
パーキンソン病の主な病機とされます。ここでいう「肝風」とは、体内がまるで乱気流のように揺れ動いている状態で、震えや筋肉のこわばりなどが引き起こされていると考えます。
・肝腎陰虚
パーキンソン病における肝風内動の要因には、加齢などにより、肝と腎の陰液(体を潤し養う成分)が不足し、肝腎の働きが失調していることが多くあります。腎は肝と密接な関係にあり、肝の過剰な働きを抑える役割も担っています。そのため、腎が弱ると肝の働きが乱れやすく、肝風が発生しやすくなると考えます。
・痰湿
飲食不節や臓腑の機能失調により、体内に余分な老廃物(痰湿)が滞留し、ときに脳の働きを阻害するとされます。また、この痰湿も肝風の発生を助長するとも考えられています。
※パーキンソン病によく使うツボ(経穴)

肝と腎の陰液を補う配穴の一つに「太衝」「太渓」「三陰交」の組み合わせがあります。太衝は肝の働きを整え、太渓は腎の働きを整えます。三陰交は陰液の巡りと生成に関わる三つの経絡が交わるツボで、陰液を補うときによく使います。

「風池」あらゆる症状に使われるいツボです。肝風に対しては、風を鎮める働きがあります。また、パーキンソン病では首の付け根の強いコリにより自律神経に悪影響となります。、「風池」を含めた首の付け根全体をゆるめていくことで、自律神経の安定において非常に重要となります。
