機能性ディスペプシア(FD)とは、胃の検査では異常が見つからないにもかかわらず、胃の痛みや膨満感、胃もたれなどの症状が慢性的に繰り返される疾患です。原因としては特に、ストレスや生活習慣の乱れによる自律神経のバランスの崩れが大きく関与していると考えられています。※「ディスペプシア」とは「消化不良」を意味します。
◇主な症状
1. 食後の胃もたれ感
胃の弛緩反応(胃袋が食べ物を受け入れるために柔らかく広がる働き)が低下して起こります。
2. 早期飽満感
少量の食事で満腹になってしまう状態です。胃の機能全体が低下し、食べ物を受け入れて処理する力が弱まっているために起こります。上記1の胃の弛緩反応の低下も、この症状に関係しています。
3.心窩部痛
みぞおち(胃のあたり)に感じる痛みです。胃の知覚過敏が関与しており、少しの刺激でも強く痛みを感じてしまいます。
4. 心窩部灼熱感
みぞおち(胃のあたり)がヒリヒリ、チリチリと焼けるように感じる不快感です。主に胃酸が過剰に分泌されたり、胃の知覚過敏関与しており、少しの刺激で胃が焼けるように感じてしまいます。
5.吐き気・嘔吐
胃の運動機能が低下することで、内容物が胃に停滞します。胃の知覚過敏も影響しており、わずかな刺激で吐き気を催すことがあります。

◇鍼灸の効果
機能性ディスペプシアの方には、自律神経の交感神経が優位になりやすく、ストレスによって症状が悪化しやすい傾向があります。実際、心配事や不安がやわらぐと、胃のもたれや不快感が軽減されるケースも多く見られます。
鍼灸には、自律神経の働きを整え、心身の緊張をやわらげる効果があり、ストレスが引き金となる症状の改善に非常に有効です。
◇東洋医学で診る「機能性ディスペプシア」
東洋医学では主に「胃」の機能失調として捉えられます。ただし、「胃」は「脾」と密接に連携して働いており、この「脾・胃」のバランスが崩れることも症状に関与すると考えられています。
・肝気鬱結 → 肝脾不和/肝胃不和
機能性ディスペプシアの背景には、精神的なストレスや不安などによる影響が大きくかかわっているとされます。これらの感情は、気の巡りを調整する「肝」の働きを乱しやすく、気の流れが滞ることで、まず「脾・胃」に影響が及びやすくなります。
「肝」はもともと、気を全身に巡らせる役割(疏泄)を担っており、心身のバランス維持に欠かせない存在です。その働きがうまくいかなくなることで、胃腸のはたらきが弱まり、胃もたれや早期飽満感、悪心などの症状が現れやすくなると考えます。

◇「機能性ディスペプシア」の鍼灸治療
当院では、以上の視点を踏まえながら、丁寧な問診と全身の状態を確認し、気・血・津液、五臓六腑、経絡のバランスを総合的に判断します。その上で、鍼や灸を用いて適切なツボ(経穴)に刺激を加えることで、「機能性ディスペプシア」の改善を目指していきます。
「機能性ディスペプシア」「原因不明の消化器症状」でお困りの方はご予約、またはお気軽にご相談ください。